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「“ガチ”でございます」高校3年E組担任(国語科)
春の体育祭前日、料理・焼き菓子部の中1新入部員が2人やってきて「クラブ対抗リレーに出たいのですが・・・」と申し出てきました。私はつい、
「あの・・・、今年度からは生徒数も増えて・・・ご担当の先生から『ガチ部門のみ』とお知らせがあったのよ・・・、大丈夫ですか?高3の部員たちとか・・・、本当にとっても速いですよ・・・?」と聞いてしまいました。
日本学園の体育祭、かつての「クラブ対抗リレー」は、「ガチ部門」ともう1種「お披露目部門」?「お楽しみ部門」?とでも言いましょうか、「その他」のクラブ対抗リレーもあった時代がございました。
「自転車部」はもちろん自転車で疾走しましたし、「柔道部」は、リレーの途中でにわかに現れる部員たちをバッタバッタと投げ倒しては大盛り上がり!

「軽音楽部」はスタートの合図でおもむろにトラック中央へ楽器を運びはじめ、青空の下ギターをかき鳴らします。ドラマーが気持ちよく叩き切り、スティックを青空へ突き上げるまで・・・
何分かかろうと、ギャラリーは温かい手拍子を送ったものでした。
「山岳部」はテントを設営していたでしょうか。第一走者からアンカーまで、ひたすらに、着々と完成させながら・・・


懐かしい光景が心の中に広がります。そんな回想に耽っていると・・・
まだあどけなさの残る中1部員、「はい!全力で頑張りますからエントリーお願いします!僕ら走るの大好きです!」
なんという純朴さでしょう。心を打たれました。「大丈夫?」だなんて教師らしからぬ愚問でございました。
高3部員に「中1が出たいと・・・」と急いで伝えると「じゃあ僕らあとの2枠走りますよ」と二つ返事で引き受けてくれました。こちらもなんて爽やかな先輩たちなのでしょう。時計を見ると、クラブエントリー〆切12:00少し前。体育祭仕切りで飛び回っている担当のH先生をなんとか見つけだし、
私「クラブリレーにエントリーいたします!」
H先生「ええ?・・・ということは料理・焼き菓子?すみません、今年はガチ部門のみ、なんですよね・・・」
私「ええ、ですから、その“ガチ”でございます!」



(料理・焼き菓子部 活動風景)
私は国語科教員になってから、日頃から俗語、マジ?ですとかやばいですとか、そういうものは一切使わないと決め・・・、貫いてきたのですが。 若かりし日々の初志貫徹を胸に・・・
しかしこのときばかりは部員の挑戦が嬉しくてガチガチ、ガチガチガチガチ、多用・乱用いたしました。
当日朝、テニス部顧問・よく日に焼けた笑顔の眩しい数学科・K先生がやってきて。
「先生~! 昨日H先生にクラブリレーの硬式テニス中・高で1チームにできないですかねー?って言われまして!理由が『料理・焼き菓子』が増えたからって聞きましたよ~!走るんですね!」
私「はい!“ガチ”でございます。テニス部、削られてしまいましたか?」
テニス部顧問「いえ、中・高どちらも出場させてもらえそうです!お互い頑張りましょうね!」
顧問同士も爽やかに健闘を誓い合い、固い握手を交わしました。



高校生ともなると、選手決めから練習・本番まで体育祭実行委員が中心となり、生徒たちが自主的に進めます。私のクラスの生徒たちもとても頼もしく、楽しそうに本番を迎えておりました。
お昼休憩、クラスの生徒たちに、
私「お料理部、午後一番のクラブ対抗リレーに出るのよ」
高3E「おお!お料理部出るんですか?すごいっすね~!」
私「・・・それも、“ガチ”なのよ」
高3E「おお!お玉とか持って走るやつじゃないんすね?それは頑張ってほしいっすね~!」
午前の競技で疲れてやっと昼食中だというのに、そわそわと話しかける担任に律儀に返答してくれる心優しい高3E組たちでございます。


お昼休みが終わりに近づき、実行委員のアナウンスが聞こえてきました。
「午後の競技が始まります。これから呼ばれる『クラブ対抗リレー』」に出る部の選手は、すみやかに集合してください。硬式野球、バレーボール、サッカー、バスケットボール、トライアスロン、中学硬式テニス、高校硬式テニス、料理・焼き菓子・・・」
会場が軽くどよめいておりました。「文化部」唯一のエントリーでした。
急いでスタート位置に駆けつけますとそこには、強豪クラブのユニフォームを着た精鋭たちの中に、エプロン姿で真剣にスタート待ちをする4人の部員の姿が。すでに目がうるうるしてきてしまいました。

素晴らしい全力疾走でした。4人ともとっても速かった!しかしやはりそれを上回る、本校の強豪クラブから選抜された俊足たち!

結果は最下位、俊足スポーツマンたちに追いつくことはできませんでしたが、4人の勇姿に勇気と感動をもらいました。
走り終えたあと、「バトン練習さえちゃんとしてたらワンチャンあったかもだよね!楽しかったね!」と爽快に讃え合う高3と中1の部員たち。勝ち負けではない、挑戦することに意義あり、なんでも心から楽しむこと。そんな本校の生徒たちをいつも誇りに思います。

(もう一人のメンバーは直後に競技があったので3ショットです)
高3部員「バトンに・・・やっぱりお玉なのかな?って持ってきたんですけど、危ないからダメってH先生に一瞬で却下されました」
・・・えええええ!なぜお玉を!しかも今やっぱりって言った!“ガチ”のみって説明したじゃーん!と心の中では盛大にずっこけましたが、どうやらお玉の持参もおふざけではなく“ガチ”でしたようで、
即回収されたというお玉の行方を案ずるまなざしがとっても真剣なものですから、「私が受け取っておきますから心配しないでくださいね。午後も頑張って!」と懇切丁寧に見送りました。
2学期からはいよいよ新校舎での学びが始まる本校です。先日、OBが活動サポートに来てくれました。たくさんのお料理と、他愛ないおしゃべりの思い出の詰まった懐かしい「家庭科室」をバックに、最後の記念撮影もいたしました。こうして母校を支えてくれる卒業生たち、嬉しいかぎりです。


もうすぐ夏休みですね。受験勉強に秋の文化祭、そしていよいよ高校3年生は、それぞれの進路へ歩き出します。どれも“ガチ”で頑張りましょうね。生徒たちが“一生懸命”に挑戦する姿こそが、いつも私のエネルギー源です。
