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「実験室に眠っていた百年前の道具」高校3年E組副担任(理科)
この夏、私は大掛かりな「経験」に挑戦しました。
…といっても授業ではなく、新校舎完成に伴う実験室の引っ越し作業です。一口に引っ越しと言っても実験室の引っ越しは実験器具や薬品、参考書や模型まで山のようにあり、1学期の間に授業の裏でせっせと作業をしていましたが全く終わらない……。結局、引っ越し当日まで作業をしていたのは、生徒の皆さんが夏休みの宿題に追われる姿とまったく同じでした。
引っ越し作業では、よく使われてきた実験器具だけでなく、これまで長年使われてきていなかった実験器具などの整理も行いました。その中で目に留まったのが、埃をかぶった段ボール箱から出てきた「明治時代の電流計」です。木製の枠に真鍮の部品、丁寧に刻まれた目盛り板――まるで博物館の展示品のようでした。思わず手に取り、その重量感と時代を感じさせる質感に圧倒されました。100年以上前、この器具を通して電流を測り、自然の法則を確かめようとした先人たちの姿を想像すると、物理という学問が持つ歴史の奥行きを改めて実感しました。
現在、私たちはデジタル機器で簡単に数値を表示することができます。しかし、明治の人々が使ったこの電流計も、現代の最新機器と同じ「電流」を相手にしていたのです。
時代を超えて、私たちが同じ自然の法則に挑んでいることに、不思議な感動を覚えました。
物理の魅力は「公式」や「数字」にあるのではなく、「自然を理解したい」という人間の探究心にあります。目に見えない電流や力を、どうやって「見える」ようにするか。どうすれば再現性をもって確かめられるか。先人たちは試行錯誤を重ね、器具を作り、知識を積み重ねてきました。その流れの延長線上に、今の私たちの学びがあります。
私は新しい実験室での授業を通じて、生徒の皆さんに「なぜ?」と考える楽しさを味わってほしいと思っています。実験室に一歩入ると、普段の教室とは少し違う空気があります。思いがけない実験結果に驚いたり、仮説通りに結果が出て嬉しくなったり――その小さな体験が、物理を「知識」ではなく「自分のもの」として実感させてくれるはずです。
最新の器具と明治の電流計が同じ実験室に並んでいる光景は、時代を超えて人が自然を理解しようとしてきた証のように思えます。その歴史の一端を生徒の皆さんと共有しながら、新しい実験室での学びを充実させていきたいと考えています。
実験室の引っ越し作業は、結局のところ期限ぎりぎりまでかかってしまいました。夏休みの宿題と同じで、「もっと計画的に進めていれば…」と反省しています。ただ、ギリギリの中でも思わぬ発見があったのは確かで、あの明治時代の電流計との出会いもその一つでした。
学びも宿題も、計画的に取り組んだ方が余裕を持って深めることができます。最後に慌てて片づけるよりも、途中で振り返ったり、新しい発見を楽しんだりする時間が生まれるのです。生徒の皆さんには、宿題もできるだけ早めに終わらせて、その分、新しい挑戦や発見の時間にあててほしいと思います。
